視点:生後6か月間の完全母乳育児は引き続き推奨すべきか?
Perspective: Should Exclusive Breastfeeding Still Be Recommended for 6 Months?
どんな研究?
01 — SummaryWHO推奨の「生後6か月間の完全母乳育児」について懸念点(鉄不足・食物アレルギーリスク・乳量不足)を検証したレビューです。遅延臍帯結紮を行えば鉄不足のリスクは大幅に減らせること、6か月完全母乳育児が食物アレルギーを増やすという集団レベルの証拠はないこと、「乳量不足」の多くは支援体制の問題であることが示されています。著者らは現行の「6か月完全母乳」推奨を変更する根拠はないと結論づけています。
要点
02 — Key points- 01遅延臍帯結紮を行えば、6か月完全母乳育児による鉄欠乏リスクは大幅に軽減できる
- 02生後6か月未満で離乳食を始めた場合と比べて、6か月完全母乳育児が食物アレルギーを増やすという集団レベルの証拠はない
- 03「母乳が足りない」という訴えの多くは乳腺機能の問題ではなく、授乳支援・社会的サポートの不足によると考えられる
ナラティブレビューであり、引用した個別研究のバイアスを引き継ぐ。個々の赤ちゃんの発達の準備に個人差があることは認めており、全員に一律に当てはまるわけではない。
この研究の確からしさ
03 — Evidence書誌情報
04 — Reference- 研究デザイン
- レビュー(視点論文)
- エビデンス強度
- 総説・その他
- 掲載誌
- Advances in Nutrition
- 発表年
- 2019
- DOI
- 10.1093/advances/nmz039
- 出典
- Europe PMC
この研究が関わる疑問
05 — Questions関連する研究
06 — RelatedWHO推奨の6か月完全母乳育児と認知発達の関係——ドイツの大規模縦断研究
ドイツの大規模縦断調査(最大2511人)を用い、生後6か月の完全母乳育児がその後の認知発達(3〜7歳の抽象思考・音韻作業記憶)と関係するかを検討しました。その結果、6か月間の完全母乳と短期間の母乳・非母乳を比べても、どの年齢でも認知成績に有意な差は見られませんでした。早産・低出生体重の「小さく生まれた子ども」でも同様でした。母親の学歴が認知成績を一貫して予測していました。
地域の仲間(ピア)による授乳支援の効果:システマティックレビュー・メタアナリシス
47件の研究をまとめたメタアナリシスにより、地域の仲間(ピアサポーター)による授乳支援が完全母乳育児の継続期間を延ばす効果を検討しました。低・中所得国では3〜6か月時点での完全母乳育児率が大きく向上し(約2〜9.5倍)、高所得国でも3か月時点で約2.6倍の向上がみられました。授乳開始や初乳のみの授乳(プレラクテアルフィーディング抑制)にも効果がある可能性がみられました。
幼少期の鉄不足とその後の発達への長期的な影響(システマティックレビュー)
幼いころに鉄が足りなかった子どもが、その後どう育つかを調べた17件のコホート研究をまとめたレビューです。鉄が不足していた子どもは、不足していなかった子どもに比べて、考える力(認知)・体の動き(運動)・ことば・行動の面で成績が低い傾向が複数の研究で報告されました。著者らは、生まれてから約2歳までの「最初の1000日」に鉄不足を防ぐことが大切だとまとめています。