母乳とIQの関係は、脂肪酸代謝の遺伝子型で変わる?
Moderation of breastfeeding effects on the IQ by genetic variation in fatty acid metabolism.
どんな研究?
01 — Summary母乳に多く含まれる脂肪酸が脳の発達を助けると考え、その代謝に関わる遺伝子(FADS2)の型によって母乳とIQの関連が変わるかを、2つの出生コホートで調べた研究です。ある型を持つ子では母乳で育った場合にIQが高い関連がみられた一方、別の型では差がはっきりしなかったと報告しています。著者らは、遺伝と環境(母乳)が組み合わさってIQに関わる可能性を示すものだとしています。
要点
02 — Key points- 01母乳とIQの関連が脂肪酸代謝の遺伝子(FADS2)の型で変わるか調べた
- 022つの出生コホートのデータを分析した
- 03ある遺伝子型では母乳とIQの高さに関連がみられた
- 04遺伝と環境が組み合わさって発達に関わる可能性を示した
- 05古典的な遺伝子×環境の相互作用の研究として知られる
観察研究のため、母乳が原因でIQが上がったと断定はできません(関連であり因果ではない)。この遺伝子×母乳の相互作用は、その後の大規模な研究で再現されないことが報告されており(後年の検証研究を参照)、結果は確実とはいえません。社会経済的背景や母親の知能など、母乳とIQの両方に関わる要因の影響も完全には除けません。
この研究の確からしさ
03 — Evidence書誌情報
04 — Reference- 研究デザイン
- 遺伝子×環境の相互作用研究(出生コホートの分析)
- エビデンス強度
- 観察研究
- 掲載誌
- Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
- 発表年
- 2007
- DOI
- 10.1073/pnas.0704292104
- 出典
- Europe PMC
この研究が関わる疑問
05 — Questions関連する研究
06 — Related母乳とIQに遺伝子型(FADS2)は関わらない? 大規模データでの再検証
「母乳とIQの関連は脂肪酸代謝の遺伝子(FADS2)の型で変わる」という2007年の有名な報告を、約33万人という非常に大きなデータ(UKバイオバンク)で検証し直した研究です。さまざまな認知テストなどで調べた結果、遺伝子型と母乳の組み合わせによる影響(相互作用)はみられませんでした。著者らは、以前の陽性の報告は集団構造の偏りなどによる見かけ上のものだった可能性が高いとしています。
とても早く生まれた赤ちゃんの母乳と、脳の発達・7歳時の発達
妊娠30週未満などでとても早く生まれた赤ちゃん180人を対象に、生後28日間にどれだけ母乳を多く飲んだかと、その後の脳や発達との関連を7歳まで追って調べた研究です。母乳を多く飲んだ日が多い子ほど、生まれた頃の脳の一部(深部の灰白質)の体積が大きく、7歳時のIQ・算数・記憶・運動の成績がやや良い関連がみられました。著者らは、新生児期に母乳を中心に与えることが発達に関わる可能性を示すとしています。
母乳が知能指数・脳の大きさ・白質の発達に与える影響
授乳の方法をランダムに割り付けた過去の試験の参加者50人について、青年期(平均約16歳)にMRIで脳を調べた研究です。母乳の割合が高いほど言語性の知能テストの点数が高い傾向がみられ、とくに男子では脳全体や白質の量との関連も観察されました。母乳が脳の発達、なかでも白質の成長を促す可能性を示すとしていますが、人数が少なく、さらなる研究が必要です。