とても早く生まれた赤ちゃんの「母乳のパラドックス」(フランスの2つのコホート)
The apparent breastfeeding paradox in very preterm infants: relationship between breast feeding, early weight gain and neurodevelopment based on results from two cohorts, EPIPAGE and LIFT.
どんな研究?
01 — Summaryとても早く生まれた赤ちゃん(超早産児)2925人を対象に、退院時の母乳育児・入院中の体重増加・その後の発達の関係を、フランスの2つのコホートで調べた研究です。母乳で育てられた子は入院中の体重増加が少なくなりやすい一方で、2〜5歳時点の発達は良好な傾向がみられました。体重の増えが少なくても発達がよいというこの一見矛盾した結果を、著者は「見かけ上の母乳のパラドックス」と呼んでいます。
要点
02 — Key points- 01フランスの超早産児2925人を対象にした観察研究
- 02退院時に母乳だった子は入院中の体重増加が少なくなりやすい
- 03一方で2〜5歳時点の発達は良好な傾向(不利な発達のリスクが低い)
- 04体重増加が少ないのに発達がよい点を「見かけ上のパラドックス」と表現
- 05早産児でも母乳の利用を後押しする結果と著者は解釈
観察研究であり、関連がみられても因果関係は示せません。母乳を選ぶ家庭はほかの面でも異なることが多く、統計的な調整(傾向スコア)を行っても残る偏りがありえます。対象はとても早く生まれた赤ちゃんに限られ、一般の赤ちゃんや日本にそのまま当てはまるとは限りません。母乳だと初期の体重増加が少なくなりうる点には注意が必要です。
この研究の確からしさ
03 — Evidence書誌情報
04 — Reference- 研究デザイン
- 観察コホート研究(2コホート)
- エビデンス強度
- コホート研究
- 掲載誌
- BMJ Open
- 発表年
- 2012
- DOI
- 10.1136/bmjopen-2012-000834
- 出典
- Europe PMC
この研究が関わる疑問
05 — Questions関連する研究
06 — Related母乳育児と赤ちゃんの発達(きょうだい比較を使った日本のエコチル調査)
日本の大規模調査「エコチル調査」の子ども約7万7千人を対象に、母乳育児と1歳までの発達の関係を調べた研究です。生後12か月まで母乳を続けた子どもは、1歳時点で発達の遅れがみられる割合がやや低い傾向がありました。家庭環境などの影響を減らすため、同じ家庭の「きょうだい同士」を比べる方法でも、同じ向きの関連が残りました。
早産児の母乳育児と神経発達のアウトカム:システマティックレビューとメタアナリシス
早産で生まれた赤ちゃんを対象に、母乳育児がその後の神経発達とどう関わるかを調べた研究をまとめたものです。16件(うちランダム化比較試験は1件、残りはコホート研究)を解析した結果、母乳をあげた群は、まったくあげなかった群に比べて、長期的な認知の得点が高い傾向や、発達の遅れのリスクが低い傾向がみられました。一方で、運動の発達への影響ははっきりせず、また母乳と母乳ドナーミルクのどちらが優れているかも明確ではありませんでした。
乳幼児期の腸内細菌と発達障害:システマティックレビューとメタアナリシス
乳幼児期の腸内細菌(マイクロバイオーム)と、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)などの発達の特性との関係を調べた19件の研究をまとめた解析です。多くの研究で、腸内細菌のバランスの乱れと発達の特性との間に一定の関連が見られたと報告しています。たとえばASDではビフィズス菌が少なく特定の菌が多い傾向など、菌の種類ごとの違いが指摘されています。ただし含まれた研究の質はばらつきがあり、結論は確定的ではありません。