大規模なエクソーム解析が示す、自閉症の脳の発達とはたらきの変化
Large-Scale Exome Sequencing Study Implicates Both Developmental and Functional Changes in the Neurobiology of Autism.
どんな研究?
01 — Summaryこれまでで最大級の規模(約3万6千人分、うちASDが約1万2千人)で、遺伝子の中でたんぱく質を作る部分(エクソーム)を読み解いた研究です。ASDのなりやすさに関わる遺伝子を102個特定しました。これらの多くは脳の発達の早い時期にはたらき、神経細胞どうしの情報のやり取りや遺伝子のはたらきの調節に関わっていました。ASDには生まれもった遺伝的要因が深く関わることを裏づける内容です。
要点
02 — Key points- 01ASDを含む約3万6千人分のエクソーム(遺伝子のたんぱく質設計部分)を解析した、大規模研究。
- 02ASDのなりやすさに関わる遺伝子を102個特定した。
- 03多くは親には無く子に新たに生じた変異(新生変異)と関連していた。
- 04これらの遺伝子は脳の発達初期にはたらき、神経のはたらきや遺伝子調節に関わる。
- 05一部は重い発達の遅れとも、一部はASDの特徴とより強く関連していた。
示されたのは遺伝子とASDの「関連」で、これらの変異だけでASDが決まるわけではありません。多くの人ではこうした変異は見つからず、遺伝以外の要因も関わると考えられます。集団全体の傾向であり、個人の診断や予測に使えるものではありません。
この研究の確からしさ
03 — Evidence書誌情報
04 — Reference- 研究デザイン
- 症例対照を含むエクソーム解析
- エビデンス強度
- 観察研究
- 掲載誌
- Cell
- 発表年
- 2020
- DOI
- 10.1016/j.cell.2019.12.036
- 出典
- Europe PMC
この研究が関わる疑問
05 — Questions関連する研究
06 — Related自閉スペクトラム症に関わるありふれた遺伝的変異の特定
自閉スペクトラム症(ASD)の人と、そうでない人あわせて4万6千人あまりのゲノムを大規模に比べた解析です。ASDと関わるありふれた遺伝的変異の場所がいくつか見つかり、これらは統合失調症やうつ、学歴などにも関わる領域と一部重なっていました。生まれもった遺伝の要素がASDのなりやすさに大きく関わることを、改めて示した内容です。
自閉スペクトラム症に関係する、妊娠・出産・出生後の要因(メタアナリシス)
自閉スペクトラム症(ASD)に関係する、妊娠中・出産時・出生後の要因を、17件の研究(自閉症の子ども約3万8千人を含む大規模データ)からまとめたメタアナリシスです。両親の高年齢、妊娠高血圧・妊娠糖尿病、早産(在胎36週以下)、低出生体重、出産時のトラブルなどが、自閉症とゆるやかに関連していました。これらは「関連する要因」であり、原因と確定したものではありません。
自閉症で壊れている、神経のつなぎ目・遺伝子の読み取り・染色体に関わる遺伝子
自閉スペクトラム症のある約3,900人と、同じ集団の対照や親を比べ、遺伝子の中身(エクソーム)を網羅的に調べた研究です。まれに起こる遺伝子の変化を解析し、自閉症に関わると考えられる遺伝子を多数特定しました。見つかった遺伝子の多くは、神経どうしのつなぎ目(シナプス)づくりや、遺伝子の読み取りの調整にはたらくものでした。