母乳育児の期間と子どもの発達
Breastfeeding Duration and Child Development.
どんな研究?
01 — Summaryイスラエルの全国的な乳幼児健診のデータを使い、約57万人の子どもについて、母乳をあげた期間と2〜3歳時点の発達との関連を調べた大規模な後ろ向きコホート研究です。家庭の状況などの条件をそろえて分析したところ、6か月以上母乳をあげた子は、それより短い子に比べて、言葉・社会性・運動の発達の節目の遅れが少ない傾向がみられました。同じ家庭のきょうだい同士で比べた分析でも、母乳が長い子の方が発達の遅れや神経発達の診断が少ない傾向がみられました。
要点
02 — Key points- 01約57万人を対象にした大規模な後ろ向きコホート研究
- 02家庭環境などの条件を調整して分析
- 036か月以上の母乳育児で発達の節目の遅れが少ない傾向
- 04同じ家庭のきょうだい同士の比較でも同様の傾向
- 05母乳が排他的・長いほど神経発達の診断が少ない傾向
観察研究(後ろ向きコホート)のため、母乳と発達の関連はみられても因果関係を証明するものではありません。母乳を長く続けた家庭はもともと生活環境が異なる可能性があり、きょうだい比較で一部和らげているものの、調整しきれない要因の影響は残ります。イスラエルの一集団の結果であり、日本の子どもにそのまま当てはまるとは限りません。
この研究の確からしさ
03 — Evidence書誌情報
04 — Reference- 研究デザイン
- 後ろ向きコホート研究(きょうだい比較を含む)
- エビデンス強度
- コホート研究
- 掲載誌
- JAMA Network Open
- 発表年
- 2025
- DOI
- 10.1001/jamanetworkopen.2025.1540
- 出典
- Europe PMC
この研究が関わる疑問
05 — Questions関連する研究
06 — Related乳児期の授乳と3歳・7歳時点の認知:母乳育児の期間と排他性の影響
アメリカで妊娠期から子どもを追跡したコホート研究で、母乳をあげた期間の長さと、3歳・7歳時点での言葉や知能の発達との関連を調べました。家庭環境や母親の知能などの条件をそろえて分析したところ、母乳の期間が長いほど、3歳時点の言葉の理解や7歳時点の知能の得点がわずかに高い傾向がみられました。一方で、記憶・学習の検査の得点とは関連がはっきりしませんでした。母親が授乳中に魚を多く食べていた場合に、一部の発達でより良い傾向が見られる可能性も示されました。
母乳育児の期間と神経発達:自閉スペクトラム症と離乳の実践についての考察
母乳をあげる期間と、自閉スペクトラム症(ASD)や子どもの神経発達との関わりについて、これまでの研究や文献を整理して論じた総説(ナラティブレビュー)です。著者は、母乳育児が免疫の働きや腸内細菌の多様性などを通じて神経発達を支える可能性があると述べています。ただしこれは新たにデータを解析したものではなく、最適な期間についても見解の域を出ません。著者は宗教的な記述も参照しつつ約21か月という期間を提案していますが、これは科学的に確かめられた結論ではありません。
早産児の母乳育児と神経発達のアウトカム:システマティックレビューとメタアナリシス
早産で生まれた赤ちゃんを対象に、母乳育児がその後の神経発達とどう関わるかを調べた研究をまとめたものです。16件(うちランダム化比較試験は1件、残りはコホート研究)を解析した結果、母乳をあげた群は、まったくあげなかった群に比べて、長期的な認知の得点が高い傾向や、発達の遅れのリスクが低い傾向がみられました。一方で、運動の発達への影響ははっきりせず、また母乳と母乳ドナーミルクのどちらが優れているかも明確ではありませんでした。