総説・その他

記憶と脳の発達からみた、乳幼児期の昼寝と「昼寝の卒業」のしくみ

Contributions of memory and brain development to the bioregulation of naps and nap transitions in early childhood.

どんな研究?

01 — Summary

乳幼児期に1日何回も眠る状態から夜だけ眠る状態へ移っていく「昼寝の卒業」が、なぜ・どのように起こるのかを説明する仮説を示した総説です。著者らは、記憶をつかさどる脳のしくみ(海馬まわり)が育って記憶を効率よく保てるようになると、脳にたまる「眠りたい圧力」が減り、やがて昼寝が要らなくなる、と考えています。昼寝は学んだことを記憶に定着させて学習を助ける一方で、卒業も発達の自然な一部だと整理しています。

要点

02 — Key points
  • 01乳幼児期の昼寝は、学んだことを記憶に定着させるのを助けると考えられている
  • 02やがて昼寝をしなくなる(卒業する)のも、発達上の正常な変化である
  • 03記憶をつかさどる脳の成熟が進むと、昼寝が要らなくなっていくという仮説を提案している
  • 04子どもによって昼寝が要る・要らない時期が違うのは、脳の発達の差で説明できる可能性がある
読むときの注意 / Limitations

これは新しい仮説を提案する総説であり、その仮説を直接確かめた実験結果ではありません。提案された予測の多くは今後の検証が必要で、現時点で結論として受け取るべきものではありません。

この研究の確からしさ

03 — Evidence
総説・その他意見や解説など。研究データそのものではない場合がある。

書誌情報

04 — Reference
研究デザイン
総説(仮説の提案)
エビデンス強度
総説・その他
掲載誌
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
発表年
2022
DOI
10.1073/pnas.2123415119
出典
Europe PMC

この研究が関わる疑問

05 — Questions

関連する研究

06 — Related
2024 · 前向きコホート研究コホート研究

乳児期の昼間の睡眠の長さと、学齢期の認知発達との関係を追った前向きコホート研究

中国・上海で262組の親子を生後42日から10歳まで追いかけ、乳児期の昼間の睡眠の長さがのちの認知発達と関係するかを調べた観察研究です。乳児期に昼間の睡眠が特に長かったグループの子どもは、6歳と10歳の時点で「ワーキングメモリー(短い間、情報を覚えて使う力)」の得点がやや低い傾向が見られました。ほかの認知の領域では一貫した差は見られませんでした。あくまで関連であり、昼寝が原因で差が出たと示すものではありません。

2025 · 前向きコホート研究コホート研究

1歳・1歳半の睡眠時間と、2〜3歳でのてんかんの発症との関係(エコチル調査)

1歳・1歳半のときの睡眠時間と、2〜3歳でてんかんを発症するリスクとの関係を、日本のエコチル調査の約8万6千人で調べました。1歳の時点で夜の睡眠が11時間未満と短い子は、2〜3歳でてんかんを発症する割合がやや高い関連が見られました。

2025 · 準実験的研究(昼寝群と覚醒群の比較)観察研究

幼児の昼寝は、先を見越す力や「あとでやる」記憶を高めなかった

2〜3歳の子どもを対象に、昼寝が「先のできごとに備えて計画する力」や「あとで予定の行動を思い出す力」を高めるかを調べた研究です。課題の説明を受けたあとに昼寝をした子(20人)と、起きていた子(43人)を比べました。期待に反して、昼寝をしてもこれらの力に差は見られず、成績は主に年齢ともともとの記憶の強さで説明されました。子どもが昼寝をするかどうかは完全には割り当てられておらず、人数も少なめです。